スチームプリズン -七つの美徳- 感想1(エルトクリード・ヴァーレンティン)
はじめに
プレイしたことのないブランドさんの作品をプレイしてみよう活動の一環でプレイしました。
あとは、SFっぽい世界観に惹かれて。
プレイ順は、
エルトクリード・ヴァーレンティン→ウルリク・フェリエ→アダージュ→イネス・ハインリヒ・ハイネ→ユネ・セキエイ→フィン・ユークレース→グランドエンディング
です。
そんな感じで感想です。
声優さんの氏名は敬称略です。
ストーリー概要
上界と下界に分かれた世界。主人公キルス・ティステラは上界で下級警察官として職務に当たっていたが、ある日両親が何者かに殺害され、その罪を着せられて下界送りとなってしまう。
箱入りお嬢様な主人公の生きる道は? そして両親を殺した犯人とは一体?
みたいな話。
個別キャラ感想
エルトクリード・ヴァーレンティン(cv.白井悠介)
若くして銀行の頭取とリベラリタス地区の代表を務める下界の有力者。
人を煙に巻くような言動が多い。「愛は無償で自由で無限」を公言する。
キルスみたいな、勝ち気で男勝りで自らの正義に絶対の自信を持つ箱入りお嬢様が、これからどんな風に打ちのめされて、どんな風にゆがむのか楽しみ!
と思いながらプレイしていたのですが、打ちのめされはしたものの、意外と結構しなやかに受け止めてゆがまず成長してくれたのでびっくりした……
なお、別に上記のようなお嬢様キャラに恨みはないですし、むしろ好きです。
好きなキャラがゆがんでいくのが見たいという悪趣味人間なことは認める。
とはいえ、強メンタル主人公は好きなので、これはこれで全くアリですね。
ここまでの強メンタル主人公は久々だなー。ストレスフリーでとても良い。
言葉遣いは固めですけど、真っ直ぐで融通の利かない性格を現していていいと思います。
エルトクリードは、何か複雑なパーソナリティの持ち主ですよね……
私としてはこういうキャラは大好きですし(作中でもモテモテ設定ですし)、女癖(っていうか)以外は非の打ち所がないよな、よく考えると。
エルトさんの言葉尻を捉えて話をどんどんずらしていく話術? 言葉遊び? が物凄く好きです。
そして、自覚はあったけれども私は白井さんの声と演技が大好きなのだ……
この声と演技でこの話術って最高じゃないですか。本気で。
エルトさんの作中お仕事シーンは銀行頭取として働いているものばかりで、リベラリタス地区代表として働いている様子がほとんどありませんでしたよね? 他地区の代表との会合シーンぐらいでしょうか。
地区代表って、どんな統治機構になっているのだろうか。エルトさんの「俺が法です」みたいな台詞を考えると、まさか明文法が存在しないということもありえるのでしょうか?
ストーリーとしては、キルスを雇ったことで(中略)立場的に追い込まれたエルトさんが自己犠牲精神を発揮したり、キルスとの決闘に敗れて自己犠牲精神を発揮し損なったりする感じ。
……乙女ゲーに限らず、こんな決闘しまくる主人公初めて見た……
キルスが下界(保護地区)に行って後、まず保護地区統括組織HOUNDSのリーダーであるザクセン氏の人間性のヒドさに驚愕し、次いでHOUNDSと保護地区の住民(罪を犯して下界送りになった上界人)との関係の乱脈さに困惑しました。
ザクセン氏は、彼の行為に憤るというよりも、どういう環境で育てばこんなにアレになれるのか、逆に興味がわきます。ザクセン氏も元は上界の民なんですよね?
HOUNDSは、保護地区の管理・統括が役目のはずなのに、やっていることが完全に悪役です。一応、上界の神官院に所属する公的組織にもかかわらず、なぜこんな在り方が許容されているのか非常に疑問だったのですが。
神官院としては、保護地区の住民(上界における罪人)はもちろん、HOUNDS構成員も死刑同等だから、上界に関係ない場所で、死んだはずの人間間でどんな蛮行が行われていても関知しないということなのでしょうかね……
これじゃあ下界(保護地区外)の人達が上界人を毛嫌いするのもよく分かるわあ……
何せ、下界から見える上界人の代表が、HOUNDSと、犯罪者と、下界を犯罪者と性格破綻者のゴミ捨て場にしている神官院の面々だもんなあ。
HOUNDSと保護地区がそんな感じなので、ウルリクさんからの就職のお誘いには二つ返事で応えました。これ断る理由ないでしょ……でも今後断らなくてはならなくなるんでしょうね、ルート選択的な意味で。
保護地区から下界に出て以降は、エルトさんの決め台詞(?)「俺が法です」に少々困惑しつつ、閉塞感も特になく楽しくプレイできました。
まあ多分、本来は下界の人々による上界人差別のくだりで閉塞感を感じる仕様なのかなと思いますけれども、上記の通りの状況では、上界人十把一絡げで嫌われるのも理解できなくはないですしね……
で、そんなこんなで概ねエルトさんのお陰で穏やかにキルスが下界に順応したり、エルトさんとの距離が縮まったりするわけですが。
キルスの警察官時代の相棒であり、キルスの失職によりHOUNDSに転属させられたフィン・ユークレース。総じて彼のせいなんですよね、エルトさんが命と名誉の二択を迫られることになったのは。
つまり、きっかけはキルスにあると言えなくもないのですけれども。
好感度低めだと、キルスとフィンが2度目の決闘をすることになり、めでたくキルスが勝利した上で、フィンを殺すかどうかを迫られるわけですが。
そして私は初回に殺さない方の選択肢を選んだお陰で、見事バッドエンドに直行したわけですが。
情けをかけて殺さなかったというよりは、わざわざキルスがそこまでしてあげる筋合いではないだろ、と思ったのでそちらを選んだのですけどもね……
うーん、確かにフィンが病み化してしまったのは、きっかけはキルスなのですが、フィンをHOUNDSに転属させたのは神官院だし、そもそもキルスの両親の殺害事件をまともに捜査せず、無実の罪を着せて下界落ちさせたのも神官院で、フィンもそのことはよく理解しているはずですよね。
それに、気弱ながら優しく誠実だったフィンの精神を潰して、ヤンデレもどきに仕立て上げた元凶はザクセン氏だしなー。
わざわざキルスが自分の手を汚してあげる必要はないと思うんですよねえ、HOUNDSに転属させられた全員が全員、精神おかしくするってわけでもないんでしょうし。
……いやでも、性格おかしくないHOUNDS、今のところイネスさんしか出て来てないな……他は全員おかしいのかもな……
必要好感度的に、「俺の女王」エンドがベストエンドで、「続く未来」エンドはグッドエンドなのだろうなと思います。
が、個人的には、(フィン殺しの件は別にして)「続く未来」の方が良い結末だったような気がします。
「続く未来」の方は上界による下界ゴミ捨て場扱いの件が、多分解決していますし。
「俺の女王」は、ザクセン氏の態度がちょっと軟化しているのが良かったですけど、上界と下界の関係については根本的には解決してないですよね。
地区代表という立場について、「続く未来」では「上から眺めることではない。下から抱えることだ」、「俺の女王」では「下から支えるのではなく、手を引いて導いてやる」とエルトさんの意見が違っており、その対比が興味深かったです。
恋愛面では、終始エルトさんがキルスをリードしておりましたけれども、少なくとも途中までは、自分がキルスとどうにかなりたいというよりも、法定外恋愛禁止の上界で育ったキルスに恋愛とはどういうものかを知ってもらうための師匠みたいなスタンスであり、その辺もエルトさんがなかなか複雑なパーソナリティと感じた理由であります。
とはいえエルトさん、「恋愛上級者です」みたいに振る舞っていましたけども、キルスに頬チューされて取り乱していたり、ウルリクさんの「これまでのエルトの恋愛は他人のためだった」みたいな証言からすると、実はエルトさんもこれが初恋なんではなかろうか……
エルトさんは幼少期に上界であれだけ見下され、程度の低いいじめみたいな扱いをされてなお、よく今まで上界好きを継続できましたよね。エルト父は順当に上界に失望したのに。やはりエルトさんのメンタルは常人離れしているな。
まあユネ様の機転のお陰なんでしょうかね。ユネ様はユネ様で、「400年以上の時を生きる世界に愛された神官」にしては大分普通っぽい感じでしたけど。