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主にプレイしたゲームの感想を備忘録的に書き殴ります。ネタバレに配慮ありません。

ビルシャナ戦姫 ~源平飛花夢想~ 感想4(源頼朝)

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個別キャラ感想

源頼朝(cv.古川慎

ビルシャナ戦姫(源頼朝)

源義朝の三男にして義経の兄。寡黙で感情を読ませないまなざしの、冷静で冷徹な源氏の嫡子。宿願成就のために全てを駒と化す厳しさを持つ、とても素敵な兄上。

 

あ、あれ……? 何だこれ、急に本気出してきた? 何か急に滅茶苦茶良かったんですけど……!?

 

これまでのお三方のルートも別に決して悪くはなかったのですが、「源平合戦」「九郎判官」がどうしても頭にちらつくので、どうも突っ込みが先行するところがあったのですが、この源頼朝ルートは純粋に乙女ゲームのキャラクターやシナリオとして、大変良かったと思います。

頼朝ルートをプレイする前は、絶対に「政子ちゃんは??」と思ってしまうだろうなーと思っていたのに、全く気になりませんでしたし。

まあ、義経の年齢(16歳)を基準にすると、ゲーム内での年齢がはっきりしませんが、頼朝兄上は28歳~30歳ぐらいだと思われます。つまり、多分史実で北条政子と結婚するよりも前の年齢なので、何となくセーフかなと思っている。

 

頼朝ルートは、頼朝の過去や内面に深く踏み込んでおり、非常に情緒性が強い内容でした。

また、その強い情緒性と表のストーリーがよく絡み合っていて、頼朝や義経に深く感情移入することが出来ました。

ので、各攻略キャラの1周目は、個別ルートに入ったら選択肢の選び直しはしないという自分内ルールを破って、つい2回ぐらい選び直しをしてしまった……

だって、この感情移入した感覚のままハッピーエンドに至りたかったんだもの……

兄上を悲しくさせたくなくて、悲恋エンドとバッドエンドの回収は大変気が進まなかったです。回収したけども。

 

あとは、なんかライターさんもこのルート気合い入ってません? テキストの表現が大分濃い感じになっていたような。

「ねずみ色の夜気」とか「無瑕の美玉」とか「海底」と書いて「おぞこ」と読ませたりとか「中納言知盛卿、入水ー!!」(凄く源平合戦っぽい)とか、「殿のお身内が弟君だけというのもあれでしたからな」(どれ?)とか。

とにかく良かったです。

 

ストーリーとしては、頼朝と義経が少しずつ絆を結ぶのと、義経の血の力について みたいな感じ。

 

さすがにそろそろ学習したので、頼朝ルートにはすんなりと入れました。

平知盛ルートが、頼朝ルートと同じく「弁慶を手分けして探す」選択肢側なので、キャラクター好感度と武・知・優パラメータの調整でちょっとヒヤヒヤしましたけども……

ちょっと武が突出しすぎたかとも思いましたが、問題なく個別ルートに入り、恋愛エンドまで行けたので良かったです。

 

京脱出までの道程については、弁慶ルートと同様に、知盛が「今、あなたの後ろにいるの」状態で怖かった……知盛ルートで、私コレを攻略対象として好きになれるだろうか。キャラとしては嫌いではないんですが。

 

その後の道中では、青墓を経由して伊豆に立ち寄るルートをたどるわけですが、なんかそんな分かりやすい道を選ぶって、捕まえてくれと言っているようなものなのでは……

と、春玄ルートの時は思ったのですけども、このルートでは、旅慣れている吉次さんがOK出してるんだから大丈夫なんだろうな、と思ってい見ていました。いや、春玄ルートは、鞍馬寺の箱入りだったおこさま2人旅だったから……

あんまり関係ないですが、青墓は好きな小説の舞台の一つなので、無駄にテンションが上がりました。

関係はないにせよ、頼朝はちょい役だけど登場しますよ!(宣伝ではなく)

 

@伊豆での頼朝兄上とのやりとりは、ほぼ春玄ルートと同じでしたけども、今回は面会に春玄を連れて行かなかったので、頼朝への春玄の正体バレはありませんでしたね。

まあ、後々出てくる情報によると、頼朝はこの時点でもう遮那王が実の弟ではないと知っていたみたいでありますが。

 

伊豆で兄上とお話ししてから平泉に行くと、遮那王が源氏としての責任感・覚悟・帰属意識をしっかり持ってくれるので、とても安心して見ていられます。

……教経ルートと弁慶ルートでも伊豆に立ち寄ってくれれば良かったのにな。

また、そのお陰かして、義経佐々木高綱のお迎えを待たずに、自分の判断で平泉を出立する流れも良かったです。

これまでのルートでは、頼朝の負け戦は描かれてきませんでしたが、石橋山の戦いで頼朝軍が追い詰められ、もはやこれまで! のタイミングで義経一行が駆けつけてきたり、それも以仁王の令旨や高綱のお迎えによってではなく、自ら兄上を助けたい思いでやって来たんだ、という動機だったり、無私たることを己に任じている頼朝が、義経に心を開きたくなるポイントとして丁寧に描かれていたと思います。

 

富士川の戦いのあと、義経の人間離れした異類の力が話のポイントになるわけですが、義経が従兄である義仲討伐をためらったときに頼朝が言った「悪しき行いをしたものが源氏であるというだけで許されてよいのか」という趣旨の言葉と、終盤、義経が味方に恐れられ排斥されてしまった時の「身を削って多くのものを守ってきたというのに、人間離れした力を持っているというだけで切り捨てるのか」みたいな言葉が、一貫した信念(何者かではなく何をしたかが重要)の下に発せられたものであり、大変良かったと思います。

まあ、頼朝の心情的には、後者はちょっと(大分?)情が混じってるような気もしますが……

 

また、頼朝が義経の力の関係で常盤御前に話を聞きに行ったとき、春玄ルートでは言い訳から入る常盤母上にちょっとイラッとしたのですが、今回は少しましな感じでした。

というか、兄上に萌えすぎてそれどころではない。

春玄どころか義経本人も連れずに1人で常盤御前の話を聞きに行くところが、頼朝兄上の義経を手放したくない思いが表れていて、最高にニヤニヤ出来ます。

そして、常盤御前が伝えようとする本物の弟(「義経」)の件を「興味ない」と一顧だにしない兄上が、心から最高でした。

 

まあ、実際のところ、実の弟って諸刃の剣ですからねえ(ex.春玄ルート)。分からないなら分からないままにしておく方がいいのかも知れませんよねえ。

ところで、このルートに限らず、頼朝と義経はやたらと2人きりの兄弟と表現されますけど、少なくとも「義経」は2人同母兄がいますよね? 異母兄にしても、頼朝以外に源平合戦を共に戦った有名な兄弟がいると思うんですけど、みんないなかったことになっているのか……「九」郎ではあるから、他の兄弟はいたけど全員死亡設定なのでしょうか?

 

この頼朝と常盤御前の会談の帰路で、出会った義経に語られる頼朝の過去があまりにも壮絶で……

史実とはもちろん違うのですが、この頼朝の人格形成要因としては痛いほどよく分かります。よく発狂しなかったな、兄上。

義経の抱いた感想にもあったようにもはや呪縛だし、蠱毒とのたとえも言い得て妙でありました。

しかも、このことが一ノ谷合戦後に頼朝と義経が愛情を交わす伏線になっているというのが、非常に良い演出でした。

 

一の谷の戦い後、人々に恐れられる自分が兄上の側にいてはいけない、と義経は姿を消すわけですが、書き置きを残すとかなんかないんですかね……早速兄上に迷惑かけてるー! と思ってしまいました。

 

壇ノ浦の戦いでは、義経が知盛との一騎打ちの際に、知盛にどんな言葉を弄されようが、「大切なのは血ではなく絆。兄上の作る新しい世のために、たとえ人でなくなろうが知盛を倒す!」という信念を持って戦っていたのが良かったです。

やはりぶれないメンタルの持ち主は安心しますし、1つ信じられる支柱があれば、メンタルのブレは最小限に抑えられるのだなと思いました。

また義経が至った「大切なのは血ではなく絆」という信念は、頼朝の信念である(と思われる)「何者かではなく何をしたかが重要」と同じことであり、2人が同じ方向を見て戦っているということが表されていて良かったです。

 

それにしても、一ノ谷のアレで本当に重衡はお亡くなりになったのか……弁慶ルートの重衡の不死身かと思うほどのしぶとさのインパクトが強くて、いやあいつあんなもんじゃ死なんだろ、絶対化け物化して壇ノ浦に現れるだろ、と思ってしまった。

でも、最後までずっと死亡扱いだったので、本当に死んだのですね……そうか……

 

ここまでで初めて、「浪の下の都」が出て来てくれたので、ちょっとおおっ! と思いました。

幼帝を抱いて入水するのが、本来の二位尼ではなくてとっこちゃんだったのは、やむを得ないとはいえちょっと残念でしたが。

 

そんな感じで、このルートは全体的に表現が丁寧で嬉しかったです。

それだけに、シーンの使い回しなのか、「まさかあの重衡が亡くなるとはな……知盛、お前も気落ちしていると思うが……」みたいな同じような会話が2回あったのが残念でした。

 

恋愛面では、頼朝兄上が格好いいやら可愛いやら。

そしてそんな兄上を全力で慕うスタイルの義経も可愛くて良いです。

寡黙で無表情で情を見せない兄上に対して、それでもその言葉や顔色の中に丁寧に慕うべき箇所を見付けて懐いていく義経。そんな義経にほだされて感情を抑えられなくなっていく頼朝。そんな兄上の感情の揺れを感じ取って更に慕わしく思っていく義経、という正の無限ループがいいですわあ。

 

兄上の嫁取り話で傷ついていたところで、更に「義経は勝つための道具だ」という頼朝の言葉を立ち聞きしてしまい、ショックを受ける義経 は、あまりにもお約束の展開で、あー……と思いました。

でもその直後、「立場を理解していただくためにちょうど良かった」と述べる臣下を叱りつけてすぐさま義経の後を追ってくれる兄上は、さすが素晴らしい判断力ですね!

 

義経の後を追った先の鞍馬の山中で語られる、頼朝の義経への好意と、宿願成就のための無私の心の板挟みとなった兄上の苦しい胸中には心を打たれました。

しかも、感情の抑え切れなさを呼吸で表現する中の方の喋り方が最高ですわ……

感情表現の大きくない役で古川さんは天下一品ですね。別作品でも同じこと書きましたが。

 

そしてその兄上の吐露を聞いた義経が、見返りの愛を求めない決意と共に、「私のことは顧みず、前を向いて進んで下さい」と頼朝に願うのは大変熱かったです。

 

一の谷の戦いにおける知盛の「それは兄の目ではない、嫉妬に狂った男の目だ」という台詞には萌え上がったし、一の谷の戦い後、倒れた義経に兄上が気を分け与えて、義経に気分はどうかと聞かれた頼朝が「とてもいい」と答えるシーンには萌え死ぬ……兄上、攻めるなあ。

 

壇ノ浦での対知盛戦の切り札が、義経の性別が頼朝にばれるきっかけとなった附子毒、という伏線の張り方が良かったです。

そして、知盛にとどめを刺すのが兄上なのも良い……義経がとどめを刺すと、それはそれで義経と知盛の間に妙な唯一無二感が出そうなので嫌だ……

 

それにしても頼朝兄上、結構ルートの前半の方から義経への独占欲を分かりやすくあらわにしていて笑いました。

「将としての自覚が足りない」とか「お前の身内は私だけだ」とか、明らかに嫉妬なのに、全く気付かず普通に返答する義経に更に笑いました。兄上が不憫すぎて。

しかも、恋愛エンドに至っても同じようなやりとりをしていて、もう、笑う以外にどうすればいいというのでしょう。頑張れ、兄上!

 

悲恋エンドでは、知盛に負わされた傷の後遺症により義経が人形のようになってしまう(意識はある)わけですが、あれって気を食らうことで治ったりしないんですかね?

傷は治っても欠損(どこを欠損したのか不明ですが)は再生しないのかな……よく分かりませんね。

 

恋愛エンドと悲恋エンドの、頼朝兄上の最後の台詞が同じという演出が良かったです。

兄上ルートは全体的に手が込んでいるなーと思いました。

 

 

 


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