kakinagu-l

主にプレイしたゲームの感想を備忘録的に書き殴ります。ネタバレに配慮ありません。

ニル・アドミラリの天秤 クロユリ炎陽譚 感想6(尾崎隼人)

個別ルート感想

感想5からの続きです。

尾崎隼人(cv:梶裕貴

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ストーリーは、雪加問題+鵠居問題+四木沼(兄)問題、そしてアクセントに隼人君の過去の女(?)問題と記者カップル問題と弟問題を添えて。 みたいな感じでした。
 
プレイ開始後、ルート冒頭の感想は、「他の面子のルートとの明度・彩度の差にビビる」
そしてプレイ後の感想は、「さすが尾崎隼人は尾崎隼人だな!」
です。
 
「帝都幻惑綺譚」での隼人があまりにも好きだったもので、「クロユリ」で「……なんか違う……」となったら嫌だな、と心配していたのですが、若干の人間味をプラスされつつ、隼人は隼人のままで大変良かったです。
もう、冒頭の雰囲気というか空気感からして、これまでと比べて段違いに明るく鮮やかでしたからね。
まあ、これについては、直前にやっていたのが滉ルートだからという理由も大きいと思われる。
 
冒頭から続くシーンの、ヤンデレ弟の完璧な手懐け方には驚愕の心地でした。
紫鶴ルートじゃないのにアレですよ? しかも、紫鶴さんは「憧れの作家先生」枠でしたが、隼人はきちんと「気のいいお兄さん」枠に収まってるのもスゲエ。この先の関係(義兄弟)を考えるに、後者の方が適切でしょうし。
これについても、滉ルートの直後だから衝撃が割り増しなんだろうなーとは思いますけども。
そもそも婚約の予定だった相手で、家同士公認という理由もあるんでしょうけど、それならヒタキ君は、同じく婚約関係になっている、しかも家柄的には申し分ない鵜飼君に対してもこんなに懐けるんでしょうか……ということを考えると、隼人の凄味がより一層感じられます。
いや、鵜飼君が不甲斐ないというわけではなくて、隼人の持つ天性のカリスマとか人心掌握術とかがスゲーという話で。「クロユリ」鵜飼君はマジで良い男だと思っておりますので。
 
ストーリー的には、途中まではあっちもこっちもどっちらけという感じがしていました。
何しろ、他ルートでは単品で取り扱われている問題が複数ぶち込まれておりますからねー。
まあ最終的には力業でまとめ上げられたので、なかなかやるな! と感心しました(何様か)
 
「人を信じるということ」がこのルートのテーマの一つになっていると思うんですが、鵠居&秋沙カップルについては、今までのルートでアレさが刻み込まれているので、プレイヤーとしては、信じようとする主人公カップルの背後から、終始胡散臭い目で見てしまいました。
なので、「稀モノを渡せと雪加に脅迫されている」という鵠居&秋沙と「そんなことはしていない」という雪加のどちらが本当のことを言っているのだろう、という、制作サイドで意図したであろう楽しみ方はちょっと出来ませんでした。
プレイ中は知らなかったのですが、シナリオライターさんご推奨の攻略順があったらしい?(いまだに未確認)ので、それに従ってプレイすればもうちょいハラハラ出来たんでしょうかねえ? まあ、事前に知っていたとしても、隼人をラストに持ってきていた気はしますが……(好きなものを最後に残す派)
 
まあ、鵠居&秋沙がこのルートでだけは善良なる被害者、であるわけもなく。そりゃもちろんそうよね、というところに落ち着いてくれるわけです。
雪加は、もちろん悪なのですけど、純粋さがあるというか、小物くさい策略は巡らさない感じですよね。
 
雪加問題と鵠居問題はそんな感じでして、そこに絡んでくる四木沼兄は、相変わらず「司法? 何それおいしいの?」状態ではあるんですが、鷺澤ルートほどあからさまな悪ではありませんでしたね。裏社会のボス的な感じで、悪いは悪いんですが、悪いなりの秩序? 仁義? を守っている感じ。
前作の四木沼兄も今作鷺澤ルートの四木沼兄もあまり好きとは思わなかったのですが(奥さんを愛しているところ以外)、ここに至って「こういうの、嫌いじゃないぜ」と思ってしまう自分が、ライターさんだかオトメイトさんだかの手のひらの上で転がされている感じで、ちょっと悔しい……
 
秋沙を始めとした「(マフィアの)脅迫を受けている」方々に対して、フクロウの皆さんが「証拠となる書面等はないんですか」みたいなことを言っていて、思わず笑ってしまった。
前作で自ら脅迫の証拠を破棄しまくっていた人たちが、「証拠がないと動けない」と本気で困惑している流れが、ちょっとギャグかと思ってしまいました。
まあ、前作の証拠破棄しまくりは隼人ルートではなくて滉ルートでしたから、時空が違うのであの彼らとこの彼らは別人だよ、ということなのかも知れませんが。
 
隼人が八代汽船を継ぐ気はないらしいということが、なんか、凄く衝撃でした。
他ルートで、登場人物の話に語られる八代社長が、凄く隼人父らしい感じで良かったので、隼人も将来こんな感じになるのかな、とか妄想していたんですよ……
隼人、実業家向きの性格と能力だと思うんだけどなー。
というか、もちろん職業に貴賎はないんですけども、生涯フクロウは凄く隼人のムダ遣いというか、もったいないなーと思います。
本人は一生稀モノを追うみたいなこと言ってましたけど、実際のところずっと現場ってこともないんでしょうから、とりあえずは朱鷺宮さんの後継者になるのが妥当なところなんでしょうかね。このキャリアでいくとすると、フクロウの所轄官庁がどこか知りませんけど、官僚→鵜飼君と共闘の道もあると思うんですがいかがか(誰に聞いてるのか)
(一応)大正という設定を考えると、時代が隼人をほっとかない と思いたい。
 
バッドエンドは、なかなかキッツイところを突いてくるなーと思いました。
隼人がツグミちゃんと「信じ抜ける強さ」の話をし、秋沙に「もし裏切っていても俺は恨まない」みたいなことを伝えてるんですが。
上でちょっと書いたとおり、秋沙はばっちり裏切っており、土壇場で銃口を向けられたことで、隼人は「秋沙、てめえ……」と言わされてしまうんですよね。結局裏切りを恨んでしまうという、悲哀がにじむ流れでした。
前作のバッドエンドは隼人の強さが出ていた、というかむしろ、ハッピーよりもバッドの方が、隼人の強さが強烈に際立っていたと思います。
それに対して今回のバッドエンドは、隼人の弱さというか人間味が出ているなと思いました。
バッドだからアレですけど、隼人が元々持っている強さ、まっすぐさ、真っ当さに人間味まで加わるとか、この人どこまで完璧になれば気が済むんですか……
 
隼人の弱さといえば、雪加によるツグミちゃん拉致事件後、隼人が珍しく取り乱す姿を見せるわけです。
ですが、すれ違ったりぎこちなくなったりする前に、隼人がきちんと自覚してツグミちゃんと話し合ってくれるんですよね。隼人は「自分の弱点」として語っていますけど、フツーの人間だったら弱点のうちに入らんと思うよ……
弱さを語っていても根本のところで強いというか、やはり隼人は隼人だな、と思うエピソードでした。
 
ハッピーエンドは、隼人の説教力無双再びでした。
まあ今回は実力も行使していましたので、前作のような「何で嫌いな人間(隼人)に説教されただけで真犯人が改心するのか分からない……」という微妙な気分は回避できました。
私も現代日本人なので、基本的に暴力反対ではあるのですが、ストーリーに説得力を持たせるために必要な「実力」ってありますよね、と思います。
あと、ツグミちゃんが足手まといになっていなかったのも良かったです。
 
説教力無双後、ちゃんと鵠居、秋沙、雪加に罪を償わせるところが大変良いと思います。まっすぐで真っ当な隼人ルートらしい。
雪加については、既に強制送還後の身の振り方をどうするかみたいな話が出ていたので、結果としてはあんまり翡翠ルートと変わらないような気もしなくもないですが、司法の手を経るかどうかって重要だと思うんですよ……!
 
恋愛面は、相変わらずたまに敬語になる二人が可愛かったです。
隼人はかなり愛情表現がストレートですけど、そんなにがっついてる感はなかったですね。ちゃんと時と場所とお互いの都合を考えてる感じ。まあ、鷺澤君が特別アレなんでしょうけどね。
前作でもそうでしたけど、隼人は「これ以上はやり過ぎ」ライン(対ツグミちゃん/対プレイヤーとも)の見極めが職人級に絶妙だと思います。
 
ところで隼人君はフクロウ入り前にどんだけ小金稼いだんですかね……
ピンクダイヤの指輪ぽんと買っちゃうとか、並大抵の稼ぎ方じゃねーだろ……
石のサイズとか質にもよるんでしょうけども、こと隼人が婚約指輪に対して妥協するとは思えないですしねー。
 
まあ、ちょっと将来(職業的な意味で)が不安ですけれども、隼人が幸せそうで良かった。私の所期の目的は完全に達成されました。
彼はちゃんと自力で幸せになれる人間だと思いますけどもね。
ツグミちゃんも成長してくれて、いらつくような言動も特になかったですし、「こんな好男子がツグミちゃんに引っかかっちゃったところが(自重)」とか思わんで済む。
 
隼人が彼自身としてスペシャルな存在だということについては、四木沼兄のご意見に完全同意せざるを得ませんな。