kakinagu-l

主にプレイしたゲームの感想を備忘録的に書き殴ります。ネタバレに配慮ありません。

ニル・アドミラリの天秤 クロユリ炎陽譚 感想5(鴻上滉)

個別ルート感想

感想4からの続きです。

鴻上滉(cv:岡本信彦

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ストーリーは、かつて反政府活動の旗印として担がれて逮捕・拷問され、現在は行方不明の作家の名義で書かれた稀モノが本物なのか贋作なのか? と、滉君、彼女の家にご挨拶に行く、の二本立てです。 みたいな感じでした。
 
プレイ後の率直な感想としては、「滉が対弟戦に真っ正面から地上戦を挑むとは……」です。もっと奇策を交えるとか、空中戦で何とかするのかと思った(比喩です)
でも、そういえば滉はああ見えて純粋ボーイなんでしたね(前作をプレイした感想)。それを考えれば意外じゃないのかな。
 
「帝都幻惑綺譚」で、滉の自虐的な感じとツグミちゃんへの依存が心配だったんですが(本編じゃなくてシステムボイスが)、「クロユリ」で特にヤンデレ化するわけでもなく、安心しました。まあ、ヤンデレ枠は他にいるからな。
ですが、生い立ちやスパイの前科などから、自虐的は自虐的なんですよね。不憫というか、可哀想で可愛くて「もっとがっついてもいいんだよ……ほら、鷺澤君をご覧よ」という気分にさせられます。
……うん、鷺澤君みたいにがっつく滉は既に滉じゃないですね……
 
滉のいいところは、何も言わずさらっと抱き締めたりキスしたりするところですね。
あと、ツグミちゃんが他の男(巡回先の書店主)にキャラメルで餌付けされたのに嫉妬して、夏祭りの射的でキャラメルを山ほど獲得してツグミちゃんに与えるところとか。実に分かりやすい。
滉は、相変わらず、少女漫画か! というやり口できゅんきゅんさせてくれやがりますね。
まあ、膝詰めで腹を割って話し合えば解決するだろ……という問題をすれ違いで長引かせまくるところも少女漫画っぽいんですが。
 
ストーリーは、これまでのルートに比べるとこぢんまりしていた気がします。
稀モノの持ち主・千鳥ちゃんが、その稀モノの素性について頑として口を割らず、ひょんなことからフクロウに渡った稀モノを「とにかく返して」の一点張りで、それをどうやって軟化させるか、みたいなのがメインストーリーだからですかね。
千鳥ちゃんが口を割らないだけで、その稀モノがどういったものなのか、作者は誰なのかは大体想像が付く感じですし。
 
というか、稀モノって、本当に「手書きの和綴じ本」ならなり得るんですね……
実際の書き手とストーリー考案者が違うどころか、口述筆記でもいいんですね。結構条件ゆるゆるなんだな。
 
あとは、これまでのルートと違って、メインの事件と滉個人の問題が完全に独立していたのも理由かと思います。
メイン事件と個人的問題が多少なりともリンクしていれば、それぞれもうちょっと奥行きが出たんじゃないかと思うので、その辺はちょっと残念でした。
 
個人的には、四木沼弟ルートなのに、四木沼兄もその奥さんも、影も形も出てこなかったのが意外でした。出て来ていたら滉の不憫度が更にアップするので、そうなればおいしかったのになと思ます(ゲスプレイヤー)
その反面、出て来ないでも滉はかなりあっぷあっぷしていて、これ以上はさすがに可哀想だろ、とも思うので、これはこれで。ストーリー的にも、前作に引きずられすぎてしまいそうですしね。
 
千鳥ちゃんは、これまでの「田舎から出て来た少女」の概念を打ち破る存在というか、あまりにも態度がとげとげしくて、さすがに攻撃的すぎないか……? と思いました。これ、下宿している叔母さん宅とか勤務先でもこの調子だとしたら、絶対浮いてるじゃろ……浮いてるだけで済めばいいですけども。
ほとんど終盤まで話を聞かない、聞いてもフクロウの立場と稀モノの影響力を理解しようとしない、という感じで、攻撃的な態度を崩さないので、事情がありそうなことは分かっていても、千鳥ちゃんに同情は出来ませんでしたね……。ツグミちゃんはしてたけどね。
最終的に、フクロウに対してトゲトゲしていた理由は明かされますので、一応納得はしましたが、拉致事件に発展する前に、状況を理解して話してくれてもいいようなものですけどねえ、という気持ちが拭えません。
 
で、千鳥ちゃん拉致事件がこのルートのクライマックスです。紫鶴ルートで小物っぷりを見せ付けてくれた反政府活動家・鵠居さんが、かつての仲間たる作家の居所を聞き出すべく千鳥ちゃんを拉致するわけです。
なぜ居所を知りたいのかというと、その作家さんがかつて拷問を受けた際に、口を割った復讐をしたいからとのこと。ここでもいい感じに小物臭さを発揮してくれます。
 
ツグミちゃんはと言えば、滉とともに鵠居さんのアジトに駆けつけ、そして鵠居さんのお誘いに乗って一人アジトに乗り込むことになります。
正直、「お前またかー!」と思いました。「帝都幻惑綺譚」の滉ルートでも見たし、「クロユリ」の紫鶴さんルートでも見たよ、この展開……
 
が、しかし。
ツグミちゃんは、鵠居さんが構えた拳銃を奪い、ニコニコと微笑みながら奪った拳銃をブッパしつつ、独力で千鳥ちゃんとともにアジトから脱出するという快挙を成し遂げて下さった……!
凄いな、ツグミちゃん! 鵠居さんの仲間がなぜか一人も出てこなかった(アジト内にはいるのに)のが超ラッキーでしたけど、他ルートのツグミちゃんと同一人物とは思えない手際の良さでした。
いや、他ルートのツグミちゃんも、条件が整えばこれぐらい行けるのかも知れませんけども。
 
というわけで、このルートのツグミちゃんは、私の好感度が爆上がりでした。
「どうせ綺麗事言ってるうちに窮地に陥って、危機一髪のタイミングで滉が助けに来るんだろうなー」と思いながら見ていたので、余計「ツグミちゃん、格好いい……!」となってしまいました。
そしてこんなタイミングでも不憫さを稼ぐ滉……ヒーローがクライマックスに不在ってさ……
 
まあ、滉の見せ場はそこではなくて対弟戦なんでしょうが。
ツグミちゃん宅というアウェイなフィールドで、ただただ誠実にツグミちゃんとの仲を認めてもらえるようヤンデレ枠……じゃなくてヒタキ君に語りかける滉は格好いいと思います。なんかもうちょっとこう、事件に巻き込まれたヒタキ君を助けるとか、そんな感じの経緯で認められるもんだと思ってたよ。
ですが、そんな搦め手に頼らず、正攻法でヒタキ君に向き合うところがこのルートの良さだと思うので、上の方で文句言いましたが、メイン事件と個人問題が全く関係なかったのは、逆に良かったのかも知れません。
滉が、ツグミちゃんとの関係をギクシャクさせてまでうだうだ悩んだ甲斐があったなと思います。
 
ラストのスチル、滉が前作で負った傷らしきものが見えてるんですが、意外と小さいですね?
あれで見えなくなるって、滉が入れられてた刺青って、想像してたより随分小さかったんだな。
 
しかし、覚悟決めた後の滉の声が甘すぎて、「誰だコイツ……」と思ってしまった……
つまり中の方サイコーですという話です。