kakinagu-l

主にプレイしたゲームの感想を備忘録的に書き殴ります。ネタバレに配慮ありません。

剣が君 for V 感想4(螢)

個別ルート感想

感想3からの続きです。ようやく折り返し。

螢(cv:KENN)

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口が悪く、ツンデレで、女性に免疫がない御用聞き(岡っ引き)。二刀流の使い手で、共通ルートでは実彰さんの次に強いような描写が何回かあったかと。作中で言われてたような記憶がありますが、19歳らしいです。「螢の親分」と呼ばれる19歳か……

共通ルート冒頭で、世界観を説明するときに、日の本には人間、鬼、妖怪が住む現世とマレビトが住む常夜がある、と言われておりまして。

これは攻略対象6名の中の、少なくとも一人は鬼で一人は妖怪で一人はマレビトなんだろな、と考えるわけです。
そして、6名の中で常時頭に何か巻いているのは螢さん一人。まあ、それで察しますよね……

遠野出身の九十九丸と高尾出身の鈴懸を散々田舎者呼ばわりしているため、ご自分はもちろん江戸生まれ江戸育ちの江戸っ子なんでしょうね、と思っていたら、吉備国出身らしいです。吉備の国の鬼ノ城山というところは、この時代、そんなに都会だったんでしょうか。
攻略対象6名、一人も江戸出身がいないんですねー。

私はツンデレにはあまり萌えない方なので、螢さんの鉢巻きにだけ注目してシナリオを進めました。
内容としては、人間と鬼との溝をどのように埋めるか、という感じでした。
農民ではなく鬼が対象の「刀狩り令」とか、鬼を憎む復讐鬼左京さんとの対比とか、その辺が興味深かったです。サッキョさんOh...ってなる。

和魂エンド(君ルート)

御前試合で一番刀になり、鬼が対象の刀狩り令を廃止してもらうことを目標にしている螢さん。ある日、色々あって香夜ちゃんに鬼だということがバレてしまいます。香夜ちゃんに受け入れてもらえたことを嬉しく思う螢さんですが、諸事情(女絡み)により御前試合を辞退。香夜ちゃんと許嫁とのすったもんだの後、香夜ちゃんと思いが通じます。香夜ちゃんとの仲を香夜父に許してもらうため、螢さんは香夜父に正体を明かしますが、拒絶。その後、経緯不明ながら江戸の町中に正体がばれた螢さんは江戸にいられなくなり、香夜ちゃんとともに駆け落ち状態で故郷へ旅立ったのでした。という話。

駆け落ちを見るのは二度目でした(一度目は実彰さん)。

それはともかく、やはり螢さんの鉢巻きは鬼の角を隠すためのものでした。
というか、鉢巻きで隠せる程度の角だということに驚いてしまった。同じ鬼の斬鉄、シグラギはもっと立派な角だったので。でも、斬鉄シグラギは色白だったし、鬼でも螢さんとは種族が違うのかもしれませんね。

鬼バレ前に、螢さんが雷をうまく操れない……みたいな描写があって、もしや角が折れてるのかな、だから鉢巻き程度で隠せるのか? と思ったけどそんなことはなかったです。単に螢さんが未熟なのと角がミニマムかわいいだけでした。

螢さんが御前試合を辞退した理由を香夜ちゃんに伝える際、「刀がどうとかそんなものは後でいい」と言って、鬼と人の和解のために御前試合意味なかった、みたいな発言をなさったので、ちょ、待てよという気持ちでいっぱいになってしまいました。

共通ルートであった、螢さんは剣に憧れに近い思い入れがあるという描写が彼方へすっ飛ばされた……
うーん、好意的に解釈すれば、螢さんの剣への思い入れは鬼と人が平等に生きる社会の象徴という意味が大きく、剣そのものへは大した思いはなかったということですかね。
だとしても、それに気づく描写を入れてほしかったなあと思います。台詞のみで「じいちゃんに説教された」ってきっかけは語られてますが、あんなに剣の稽古頑張ってるシーンとか、オレの剣はオマエのお遊び薙刀とは違うんだぜみたいなシーン入れてたのに、辞退決心した説明がそれだけって、螢さんの思い入れどんだけ薄っぺらいんだよと。ラブコメ描写を優先した結果なのでしょうが……

後日談で、螢さんは黒頭巾で角を隠しているのですが、トラブルを仲裁しようとしたときに頭巾が外れて角が見えてしまい、その後あっという間に街道の宿場に噂が広まって、螢さんと香夜ちゃんはまともな宿が取れなくなってしまった、というエピソードが語られるのですが。

可哀想だな、宿場の人間ひどいな、という感想よりも先に、螢さん、何で鉢巻きしてなかったの? としか。

この後日談では、螢さんの心が折れ気味になっていて、香夜ちゃんは「螢と一緒にいるのが私の幸せだよ」と励まします。
私は和魂エンドを最初に見たので香夜ちゃんの気持ちを言葉通りに取りましたが、荒魂エンドの後に再度見ると、香夜ちゃんが若干黒く思えてくる……

幸魂エンド(君ルート)

香夜父に正体を明かし、香夜ちゃんとの仲を許してもらおうとする螢さん。香夜父は拒絶しますが、螢さんは諦めず食い下がります。香夜父は明日の香夜母の命日までに山吹の花を千本集めてきたら認めよう、という無理難題を出します。螢さんは子分のかむろと山に住んでいる実彰さんの協力を得、やり遂げることに成功。螢さんと香夜ちゃんはめでたく結婚し、吉備国で鬼族の長として人間との和解のために頑張っていくのでした、という話。

結婚の条件に無理難題を出されるというのが、神話とか昔話みたいで、鬼と人との異類婚姻譚にぴったりだなと思いました。

そして実彰さんは、他者ルートではひたすらかっこいい。螢さん鬼バレのとき、薄々察しながら容赦なく鉢巻きたたっ切ったのはこの人です。
でも、「殺し合いでなければ螢殿と一戦交えてみたい」と言われたときはこの人誰? と思ってしまった。剣を振るうことそのものを厭うのが実彰さんのアイデンティティーじゃないの?

このエンドは後半螢さんがゲロ甘で、共通ルートと螢ルート前半のツンツンは一体どこ行った……という感じでした。
螢さんの真名が明かされるのもこのエンドだけですね。
末永くお幸せに。

荒魂エンド(剣ルート)

御前試合の斬鉄戦で辛勝するも、観客の面前で鬼だとバレてしまう螢さん。家光公の裁量でお咎めなし、今後の試合にも参加OKとなります。決勝の相手は実彰さん。螢さんは激戦の末、実彰さんの剣を折り飛ばして勝利、晴れて一番刀に。刀狩り令は廃止され、螢さんには天下五剣の一振り・童子切が授けられるのでした。授与式後、香夜ちゃんの元へ急ぐ螢さんは、道中で鬼と花魁を助けますが、それは辰影さんの仕組んだ罠。自分と同じ鬼に刺され、螢さんは命を落とすのでした……という話でした。

このエンドの見所は、何と言っても螢さんの亡骸に向かって語りかける香夜ちゃんの言葉じゃないでしょうか。

「本当は鬼と人が仲良くすることもどうでもいい! だってそんなの無理に決まってる」
「でも私はそれでよかった。螢が世の中全員にそっぽを向かれていれば、私は、世の中でたった一人の味方になれる」
「ねえ、螢。怒ってよ。そんなこと言ってちゃダメだって、私のことを叱って!」

これが、十五歳(推定)の言葉かよと。精神的に大人の階段上っちゃってるなあと。しかもヤンデレ方面っぽい。
これを踏まえて和魂後日談見ると、あの状況は香夜ちゃん的には本当に全く悪い状況じゃないんだろうなあ……怖いよう……

まあ、もっと一般的な見所は、(荒/奇分岐前ですが)決勝の実彰さんとの一戦でしょうね。
螢さんの剣という力への思い入れが、剣を厭う実彰さんの技量を上回ったということなのだと思われます。
でもこの一戦で実彰さんもより高みがあることを見出していたようなので、螢さん剣ルートの実彰さんは、今後も剣を捨てることなく、より高みを目指すような気がします。(願望込み)

ところでこのルートの実彰さんは、辰影さんの依頼で御前試合に出場したみたいなんですけど、辰影さんは一体何で釣ってあの実彰さんを引っ張り出したのか……大典太返上のため? とも思いましたが、その割に螢さんに授けられたの童子切ですしねえ。
しかし鬼の螢さんに童子切って、上様皮肉きかせすぎじゃないの。

一番刀って、別の方面に気を張ってたとはいえ、そんなに簡単に不意打ち(しかも致命傷になるような)受けちゃうもんなんでしょうか。
和魂後日談も然り、螢さんも結構サッキョさんの仲間(詰めが甘い)ですよね……

奇魂エンド(剣ルート)

一番刀になった後、螢さんの元には各地から鬼が集うようになります。そのため、鬼と人の小競り合いも頻繁に発生。螢さんは仲裁に走り回り、香夜ちゃんともなかなか会えない状況に。そんな中、香夜ちゃんに縁談が持ち上がります。香夜ちゃんは螢さん以外と結婚したくないと逃げ出しますが、護衛の皆さんに次々と行く手を阻まれます。そこに螢さんが現れ、オマエはオレのもんだろと叫んだところで、実は二人の関係が進まないために皆さんで一芝居打ったことが判明。二人は結婚することとなり、めでたしめでたし。

最後の大団円の一芝居に当たり前のように左京さんがいるんですが、左京さん、螢さんの鬼バレ後かなりきつく当たっていたような気がするんですが、どういう心境の変化だろう。

幸もいいんですが、奇の方が好みですね―。君ルートは「刀どうでもいい」が尾を引いていて。
和解の方向性として、幸が社会全体から少しずつ変えていこうというのに対し、奇ではもっとピンポイントで急進的というか、螢さん個人の力にかなりウェイトが置かれている感じですね。

とはいえ、螢さん引っ張りだこで香夜ちゃんと会えない、というのは、早く部下雇って組織化しろよ……と思いました。螢さんでないと仲裁できないというのは、螢さんがいなくなれば瓦解するという意味ですからね。

剣ルートの金四郎さん(螢さんの上司)が素敵です。
きっと、美人で気っぷが良くて度胸があって内助の功完璧で部下の岡っ引き連中にも好かれる、すごく良い奥さんがいるんだろな。

ということで

各エンドの感想でした。
個人的に良かった順は、奇>幸>荒>和 かな。荒和のあたりちょっと迷うところですが。

螢さんと左京さんはほぼ同じ境遇なんですよね。人間/鬼に家族を殺されたという。
でも、片や人間にも鬼にもいい者と悪い者がいることを理解して人間と鬼の和解を目指し、片や全ての鬼を憎んで復讐に邁進する……

まあ、螢さんにはまだ祖父母がいましたし、鬼と人間の力関係もあります。左京さんは天涯孤独になってしまった上、「仇討ちは権利ではなく義務」というのが武家社会の価値観ですし、裏街道で散々鬼の悪い面を見てきた(らしい)という違いがあるので、一概に左京さんが未熟だということにはならないと思いますが。

左京さんのあの頑なさには、仇討ちのためにいろいろなことに手を染めてここまで来たんだから、多少価値観を変えるような出来事があったとしても、ここで態度を変えるようなことはできない、という気持ちがあったのかな、と思います。サッキョさん……

御前試合の対九十九丸戦と対鈴懸戦、得体の知れないツートップの得体の知れなさが描写されてて良かったです。