kakinagu-l

主にプレイしたゲームの感想を備忘録的に書き殴ります。ネタバレに配慮ありません。

剣が君 for V 感想3(鷺原左京)

個別ルート感想

感想2からの続きです。

鷺原左京(cv:保志総一朗

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女性と見紛う美人な復讐鬼。(鬼とか言うと斬られそうですが)
由緒正しい旗本家の出身ですが、現在は復讐の旅に身をやつしています。
今更公式サイト見て知ったんですが、18歳!? 18歳なの!? 鈴懸と同い年で攻略対象最年少か……マジか……

なんかこう、サッキョさんとお呼びしたくなる方でした。
いや、ギャグキャラってわけではなく、ひたすらシリアス……シリアス……? うんまあシリアスな人ではあるんですが。
あと、ラッキースケベ担当ではありますが、それがサッキョさんと呼びたくなる理由というわけでもなく。

サッキョさんの件は後述しますが、彼のシナリオはとある鬼に家族を殺された左京さんの仇討ちの話です。
名家の出身らしく、左京さんは普段は穏やかで上品な振る舞いをするのですが、鬼絡みになると人が変わったように苛烈な顔を見せます。

彼の裏の顔を、プレイヤーは知ってるけど主人公ちゃんは知らないよ、というのは王道の表現方法だとは思いますが、もうちょっとプレイヤー側にも隠してくれてもいいんですよ? 共通ルート冒頭の顔見せ時点からかっ飛ばしすぎ! もっと慎みを持って! ギャップ萌えじゃなくて、なんか愉快な人になってますよ!(個人的意見です。)

そんな復讐鬼な左京さんですが、詰めが甘いんだ……

左京ルートの冒頭で、斬鉄(仇の鬼)の情報収集のため、とある花魁に話を聞きに行く左京さんですが、勧められた酒を断り切れずに口にしてしまいます。それは案の定薬入りのお酒でして。花魁情報に従って赴いた先で、待ち構えていた鬼たちに襲われ、一服盛られてフラフラな左京さんは右腕を負傷してしまうのでした。

この流れは、さすがに目が点になりました。酒が薬入りと察した上で飲んだふりをして、鬼たちを誘い出す作戦かなー、と思って見ていたら、全くそんなことはなかった。
仇討ちを果たすために裏街道を歩んできた、と左京さんは言っていましたが、これでよく今まで生き残ってこられたね?
でも、18歳か。なら仕方ないか……(そうか?)

まあ、そんな詰めが甘い左京さんなので、負傷して倒れていたところを香夜ちゃん(と近所のお子さん)に助けてもらって、パパには内緒のドキドキ秘密の同居☆ 状態になだれ込めるのですが。これがラッキースケベの星の下に生まれたということか……

左京さんに関しては、共通ルートの左京さんイベント(鬼退治)を見て、こりゃ剣ルートはひどいことになりそうだ、と察したので、剣ルートから進めてます。

荒魂エンド(剣ルート)

御前試合で斬鉄に仇討ちを申し込むも敗退する左京さんですが、仇討ちを諦めることはできません。そして人の恨みの念に取り憑く妖刀・千五村正を拾い妖刀に操られてしまいます。仇の鬼や協力者はもちろん、何の関係もない通行人まで惨殺し、狂った人斬りに成り果てた左京さんは、矢ノ彦(近所のお子さん)を手にかけ、更には香夜ちゃんも斬ってしまいます。左京さんはわずかに正気を取り戻した隙に自決。常夜(現世と死後の世界の狭間)で、自ら殺した香夜ちゃんと再会します。二人で極楽に行きましょう、と歩き出す左京さんと香夜ちゃんですが、村正が現れ、左京さんは地獄へ。香夜ちゃんは極楽への道を自ら捨て、左京さんとともに地獄へ落ちるのでした、という話。

死んで終わりではなく死後も(ネタ的に)盛りだくさんなため、シナリオの説明が長くなる……

思った通りひどいことになりましたが、なんか違う。そういうひどさを期待していたんじゃないんです。

復讐鬼なのはいいんです。最初から分かりきってたし。狂うのもありでしょう。そういう状態ですから、死んで地獄に落ちるのも別に構いません。
でも、狂うのが妖刀村正に取り憑かれたせいっていうのはどうなの?

そもそも村正の登場が唐突すぎる。研ぎ師のおじさんがちょこっと言及していたくらいで、あまりにもぽっと出の印象が否めません。それが1つのエンドどころか剣ルート全体の根幹に関わるいうのは、ちょっと納得できなかったなあ。

それに何で駿府の侍(個人名もついていない……)が都合よく妖刀村正なんて持っているのか。徳川家にとって相性最悪の刀だから? でも駿府の皆さんが蘇らそうとしている忠長様も徳川ですからね?

狂うんだったら、自前で狂ってほしかった。共通ルートの左京さん鬼退治見てれば、さほど不自然じゃないと思いますし。
このシナリオだと、悪いのは全部村正のせいにしてしまえるじゃないですか。
そういう抜け道があるせいで、起こったことだけ見ればひどい状況なのに、圧迫感や閉塞感、どうしようもなさが足りない。
もったいないなあと思います。

左京さんも、今にして思えば若さが出たんでしょうかねー、殺戮後正気に戻ったときに「嫌だ、違う、誰か違うと言ってくれ! 助けてくれ……」と言ってみたり(私には自分のせいじゃないんだという現実逃避に聞こえてしまった)、死んだ後に「極楽で二人で幸せになりましょう」と言ってみたりするもんですから。

エ――――と思ってしまいました。この辺でサッキョさんと呼ぶことにした。特に後者、「君、自分が極楽に行けると思ってんの?」と本気で問いかけてしまったから。今回のことがなかったとしても、裏街道で散々汚い仕事やってきてるんだよね? 少なくとも奉行所と関わりたくないと思う程度には。

村正、死後まで面倒見てくれるなんて意外と手厚いな……(意味が分からん、という皮肉です)とかもあり。
うーん、色々と残念なルートでした。

ところでこのエンドで自決するとき、左京さん孔魔壇前で焙烙玉を爆発させてるんですが、常夜の門に影響なかったんですかね? 心配です。

奇魂エンド(剣ルート)

村正に取り憑かれ狂った人斬りになった左京さんですが、矢ノ彦を手にかける前に辛くも正気に戻り、蛍丸を捨てた池に身を投げます。香夜ちゃんも後を追い、常夜で再会。一緒に極楽に行こう、と三途の川を渡り始める二人ですが、左京さんは途中で自分の行き先が地獄であり、香夜ちゃんはまだ死んでいないということに気づきます。香夜ちゃんが蛍丸を届けてくれたから自分は大丈夫、と言って左京さんは香夜ちゃんを此岸の岸辺に戻すのでした、という話。

荒の方で散々語ったのであまり言うことはないのですが、こちらはまだ希望があって良かったね、という。
「極楽へ参りましょう」は、二回目なので慣れました。
いや、感覚が麻痺してますが、良くはないですよね……罪なき人々を惨殺したのは共通ですから。

地獄で罪を償った後に会いましょう、と言う左京さんに対し、生き残った香夜ちゃんは左京さんが殺してしまった人々を弔いながら、寿命を全うした後での再会を期して生きていくことにします。

乙女ゲーで言っちゃいけないと分かってはいますが、香夜ちゃん生涯独身通す気なの? この時代で? まだ十五歳(推定)なのになあ……香夜ちゃんのお父さんがちょっと気の毒である。

このエンドの香夜ちゃんはそのうち出家しそうだなと思いました。

幸魂エンド(君ルート)

斬鉄に敗退後、香夜ちゃんの説得により仇討ちを諦めることにした左京さん。しかし香夜ちゃんは新しい生き方を探そうとする左京さんの姿に違和感を覚え、自分を偽るべきではないと言います。一度は手放した蛍丸を取り戻した左京さんは、復讐のためではなくその先を生きるために仇討ちを果たすことにします。花嫁行列護衛仲間の助力も得て見事本懐を果たした左京さんは、江戸で寺子屋を開き、子供たちの教育に力を尽くすという新しい人生を歩み始めるのでした。香夜ちゃんとともに。という話。

ええと……幸せになれて良かったね。仇討ちも果たせて良かったね。護衛の皆さんの協力ってところもいいね。実彰さんやたらとかっこいい。それに寺子屋を開くってところも左京ルート前半の矢ノ彦に文字を教える流れが生きてていいですね。

と、良かったところはたくさんあります。でも、一番感じたのは、剣ルート一体何だったの? ということでした。
これは幸魂エンドというよりは左京さんルート全体の話になるので後述します。

それ以外に気になったのは、寺子屋経営はいいんですけど、名門旗本の鷺原家の扱いどうするんですか、というあたりですねえ。左京さんも「どうするか考えないといけませんが」みたいなことを言っていましたが、結局どうしたのか分からずじまいです。

もう一点、後日談で左京さんは香夜ちゃんに「寺子屋の経営が軌道に乗ったら結婚してほしい」みたいなことを言います。ところで、左京さんの寺子屋は低収入層の子供たち向けの、無料のものです。
これ、永遠に軌道に乗らないよね?
というか、寺子屋にかかる経費とか自分たちの生活費とかどうするんだい? 寄付、ぐらいしか思いつかないですけど、……そんな人の好いパトロンが見つかるといいですね。

和魂エンド(君ルート)

仇討ちを遂げた後、左京さんは山城国に帰って鷺原家を再興することになります。左京さんと別れなければならない、と香夜ちゃんは落ち込みますが、左京さんは一緒に山城国に来て結婚してほしい、と告げます。そして香夜ちゃんは今度は本物の花嫁行列を仕立て、江戸から左京さんの待つ山城国へと向かうのでした。そして護衛に当たるのは偽花嫁行列のときと同じ護衛の皆さん……という話でした。

共通ルートでの偽花嫁行列を本物の花嫁行列で収めてくるとは実にズルいというかニクいというか。(褒めてる)
今度は駿河国よりずっと遠くまで行かなくてはなりませんから、大変ですね。でもタイムリミットはないようなもんでしょうし、護衛の皆さんと香夜ちゃんでわいわい楽しく行列すればいいよ。

このエンドこそ色んな問題がほぼ解決していて、良かったね! と思うと同時に剣ルート(略)

まあ、強いて言うなら裏街道で手がけた諸々は大丈夫ですかい新当主? ぐらいのもんでしょうか。まあ、「武家に生まれた者にとって仇討ちは権利でなく義務」ということなんで、仇討ち遂げたら色々チャラになるんでしょうね、と雑な脳内補完をしております。


ということで

各エンドの感想でした。
個人的に良かった順は、和>幸>奇>荒 ですねー、無難に。

「剣が君」は、剣の道を選ぶか君と共に生きる道を選ぶか、というのがコンセプトで、どれがハッピーエンドでどれがバッドエンドか決まっていない、んですよね?

今までの2名(実彰さん、縁さん)は、確かにそうだな、と思えましたし、剣ルート、君ルートのそれぞれでなにがしかの得たもの、失ったものがあるということも感じました。

が、左京さんはなー。得たものや良かった出来事が君ルートに偏りすぎてて、「剣ルートは一体何だったの……」という気持ちにさせられました。
仇討ちまで君ルートで、それも剣ルートより明らかにまともな形で果たせているというのが一番のもにょりポイントです。剣ルートの立場がないじゃないですか。

君ルートでは仇討ちを本当に諦めるぐらいでようやく剣ルートとの釣り合いが取れると思うんですがいかがか。

まあ、ここまでで死亡エンドが2つ(しかもうち1つは香夜ちゃんまで巻き込む)もあるの、左京さんだけですからねえ。その分がサービスとして君ルートに加算されたんですかねえ……

剣ルートで、左京さんが香夜ちゃんを突き放すために、「私には懇ろな女性がいる」と言ったところで、なんかテンションが上がりました。懇ろ。書けるし読めるけど、普段絶対使わない言葉です。「夫婦」を「めおと」と発音してくれたときも同じくひゃっほう! と思いました。
こういう細かいところで時代感を表現してくれるのはいいですね。