幻奏喫茶アンシャンテ 感想2(イグニス・カリブンクルス)
個別キャラ感想
感想1からの続きです。
イグニス・カリブンクルス(cv.小野友樹)
炎を操る魔獣・焔狼。獣界ベスティア出身。
言動は荒々しいが、実は気遣いのできる青年。不殺の信念を持ちながら、「最強の魔獣」の名をほしいままにする実力者。
殺戮が正義、という価値観の世界で、誰も殺さないポリシーを掲げているにもかかわらずトップに立っているという設定が共通ルートで出て来たときは、ヌルい上にありがちなキャラ造形だなー(失礼)と思っておりました。
まあ、特に乙女ゲームでは、主人公サイドのキャラクターが、殺し合い大好き! ではちょっと辛いので、仕方がないとは思いますけれども。
しかし、実はイグニスには我を忘れて敵もろとも同族を大量殺戮した過去があったり(暴走中の出来事なので本人は記憶なし)、ルート内でも味方(?)に裏切られて暴走し、敵を食い殺してしまったりと、非常に攻めた展開でびっくりしました。
まさか乙女ゲーで、攻略キャラに(性的な意味ではなく)文字通り食い殺されそうになったり、腕の肉を食いちぎられたりするとは思わんかったですよ……
ストーリー的には、獣界ベスティアの魔獣が頻繁に人間界に出現して暴れる事件が発生し、その解決のために動いていたら、イグニスが実は「ベスティアの災厄」とか呼ばれる先祖返りの力を秘めていることが判明する みたいな感じ。
魔獣は本来、食事をしないという性質を持っているとのこと。
それなのに、以前より食欲が出て来て変だなー? とかイグニスが感じているシーンがあり、これは多分、琴音ちゃんへの恋心と食欲がごっちゃになっているのだろうなー、と若干微笑ましい気持ちでみていたんですが、……なんか違ったような違わないような……まああんまり微笑ましくはなかったですね……
イグニスがアンシャンテに初来店したときのエピソードで、暴走しかけていたところ、マスター草庵においしい食事をもらったことにより落ち着いたとのこと。
だったら、今度イグニスが暴走しかけたら、おいしいご飯を作ってあげればいいんだね、とか言う会話を琴音ちゃんと交わしていたというのに、その食事がイグニスと災厄を直結させることが判明してしまうのは、なかなか良い皮肉だと思いました。
ところで、魔獣は消化器がないので食事ができないって、なんか凄い設定ですけれども、魔獣は人間界の動物に近いって、共通ルートで言ってませんでしたっけ?
口から肛門までの消化管が全くないって、魔獣の体ん中どうなってるの??
その口はどこにつながってるの? 気管のみなの?
でも、確かイグニスの弟分・ドローミが、水ぐらいは飲めるとか言ってっていましたけど、その水どこに行くの??
消化管がないなら、普通に考えれば気管を通って肺に行くんでしょうけども、哺乳類の感覚だと大分危険そうなんだけど……魔獣は大丈夫なんですかね……?
魔獣は食事をしないし、獣界ベスティアには魔力や霊力的なものは存在しないと言うことなのですが、じゃあ一体魔獣ってどうやって動いているんでしょうか?
という疑問をずっと持っていたのですが、作中で琴音ちゃんが同じ疑問を持ってくれて、その結果「生まれたときに体内に一生分のカロリーを貯めてある」と、一応説明があったので良かったです。
しかし、魔獣は普通に両親から生まれる設定なのに、両親はその一生分のカロリーをどこから生み出してるんだろうか……
イグニスが、暴走した上でとはいえ、敵を殺して喰らったことを非常に後悔し、苦しむシーンがありましたが、君、アンシャンテでかたまり肉とか食ってたよね? とちょっと思ってしまった。
牛や豚はOKで魔獣はNGなんですかね?
アンシャンテで食べた牛や豚は自分で潰したものではないからOKなのか、それとも種族が違っても同じ「魔獣」だと同族殺し、共食い的な感じになるからダメということか。その場合、自分が手を下していない「人間」や魔獣以外の人外ならOKなのか とか、イグニスの落ち込みポイントがどこにあるのかなー というのはちょっと疑問でした。
ドローミが、中の方の演技も含めて、大変良かったです。
裏切りについては、結構あからさまに怪しかったので特に驚きませんでしたが、過去に受けた傷による彼の信念とそのための行動は、正しくはないけれども非常に理解しやすかったです。
ドローミにより陥れられた状況について、「ドローミが巧妙だったんだよ」みたいな選択肢がありましたが、作中で言われていた隠密能力に加えて、煽動・誘導能力も大変強力で凄いなと思いました。
恋愛面では、琴音ちゃんといい感じになった後に、イグニスの食欲のせいで二人の間に精神的・物理的な距離が生じてしまうことになるわけですが、琴音ちゃんといい感じになったきっかけもまたイグニスの食欲である、という描写が良かったです。
皮肉というか、禍福はあざなえる縄のごとしというか。
心ではイグニスを大切に思っているし、合いたいと思っているのに、食われかけたショックでイグニスに恐怖を感じてしまい苦悩する琴音ちゃんが、人間味があって良かったです。
そして、封じられたイグニスとエサとして連れてこられた琴音ちゃんが二人の世界に入っているのに対して、ドローミのツッコミが的確で大変面白かった。
カヌスルートでもそうでしたが、イグニスと琴音ちゃん2人の関係性だけで事件や2人の間の問題が解決するのではなく、他のメインキャラやサブキャラ皆の協力があって初めてうまくいく感じが大好きです。
琴音ちゃんの背中を最終的に押すのが名もなき魔獣の少女というのも良かった。
しかし、あの少女のとんがりっぷりは「ニル・アドミラリの天秤 クロユリ陽炎譚」の千鳥ちゃんを思い出す……
イグニスが不殺の信念を持つ魔獣であると知る前にイグニスを罵倒していたあの少女の蛮勇は、殺戮が正義という世界で、一体どこから来るものだったのでしょうか。
もしイグニスが本当に、少女が当初思っていたとおりの殺し合い大好き魔獣だったとしたら、自分だけではなく集落の皆も殺されるかも知れないのにね。
そして、食物連鎖が存在しない、つまりおなかいっぱいになったらそこで狩りは終了、というストッパーが存在しない獣界ベスティアにおいて、戦う力を持たない魔獣が生き残り続けているのは、殺戮の対象として生かされているということなのでしょうね……
アンシャンテの看板アザラシ・コロロに常連の名前を言わせてみる選択肢がありましたが、「カヌス」が一番面白かったです。最初耳を疑って、3回ぐらい再生してしまった。
ベスティアからアンシャンテ周囲に向けて空きまくるホールについてとか、重態のイルを治してくれた人物についてとか、残された謎が多いルートでした。
これまでの感じからしてきっと他のルートで回収してくれると思われるので、期待したいです。